kinomi

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【死者と白狐】

<白狐>
人間に助けられ、お礼に木の実を届けていた。自分の尻尾が九つあることを苦に思っている。

<白髪の男>
白狐を助けた人間。病気で亡くなった後、不思議な力で妖怪になる。

***
***

人里離れた山奥に1人の人間が暮らしていた。
そこへ、猟銃の流れ弾で傷ついた白狐が現れる。
薪小屋にひっそりと身を潜めていた白狐は、心優しい人間に介抱されて回復するまで餌を与えられた。
歩けるようになった白狐は小屋を去り、ふらりと軒先に現れては木の実をそっと届け続けた。

しかし、それは長く続かない。
今日も木の実を届けにきた白狐は、人間の異変に気がつく。
ひどく咳き込む人間を白狐は引き戸の隙間から眺めることしか叶わない。
数日後、人間は動かなくなった。

またある日、何も知らない白狐は木の実を届けに小屋へ向かう。
山賊が入ったのか、扉が開いていて中へ入れた。
荒らされた室内には、朽ちた数個の木の実と白い骨があった。
白狐は骨を持てるだけ持って、うっそうとした山道を進む。
昼間でも辺りは暗く、陽の光は木々の隙間から少しばかり差し込むだけの獣道。
目的の場所へ着いた白狐は、大きな木の幹の根本に運んできた骨を無造作に置いた。
大きな骨は1つ運ぶのも大変で、全て運び終わる頃には日を跨いでいて夜になっていた。

疲れてその場で眠りについた白狐は、カタカタ…ガシャガシャという異音で目を覚ます。
「おい、白狐」
見知った掠れ声に聞き耳を立てた。
「そんなところで眠っていたら、熊に襲われるぞ。そうなると、今度ばかりは俺も助けられん」
木の幹にもたれ、白髪の男は、そう白狐に言った。

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