【枯れた椿と青い瞳の青年】
<青年>
異国の血を継いだ瞳の色が気味悪がられる為、なるべく顔を隠してひっそりと生活している。
<妖怪>
枯れてしまった椿が妖怪となった。とある人物を探している。
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海沿いに佇む椿の花が咲かなくなってから20年の月日が経つ。
もう、枯れてしまったのだと村の住人は言うが、1人の青年は昔見たあの赤色を忘れられずにいた。
雪が溶け、日差しが暖かくなる頃。
前はこの時期に咲いていたなと、椿の様子を見に行く。
枯れたと言われているのだから、当然咲いてなどいない。
ある日、椿の根元で昼食の弁当を食べていた青年は、頭上に伸びる枝に語りかける。
「お前、枯れてしまったのか?」
待てども蕾をつけない枝は、鳥の止まり木となっていた。
餌がもらえると思ったのか、1羽の鳥が青年の側に降りてくる。
しかし、与えられる餌は何もない。
青年は少しばかり考えて、持ってきた飲み水を手のひらに溜めて差し出してみた。
親指あたりに飛び乗った鳥はくちばしで水を数回啄んで、空の彼方へ飛んでいった。
青年は、竹筒に残る水をなんとなしに椿の根本に撒いた。
それから数ヶ月、仕事が繁忙期になり忙しい日々を送っていた青年は、帰路の途中に寄った道具屋で噂話を耳にした。
村人たちが話すには、川で釣りをしていた村人が妖怪に襲われ、命からがら逃げ出したのだという。
その妖怪の容姿は人の形をしてはいるが、頭にはツノのようなものと背中には蜘蛛の細長い大きな足があったそうだ。
そんな噂話が広がると同時に、目撃談も日にひに多くなってきた。
日が暮れ、青年はいつものように家路を急ぐ。
妖怪の類をあまり信じていなかったが、いよいよ恐ろしくなっていた。
「もし、お兄さん」
後ろから男に声をかけられ、青年は足を止める。
どこかで嗅いだことのある、ほんのりとした甘い香りが風に乗って鼻を掠めた。
「はい?」
振り向くと朱色の羽織を肩にかけた男が立っていた。
そして、青年に向かってこう言うのである。
「やっと会えたなぁ」
